抜粋やぶにらみ続編 また香港アラカルト
2010-04-24


後四ヶ月でホンコンカーブの別名で呼ばれる啓徳空港も閉鎖されランタオ島北部の埋め立て地の新香港国際空港が開港する。 既に新空港と香港島とを結ぶMTR(地下鉄新路線の空港線)はほぼ完成しスペイン製の流線形新車両が搬入されている。 現在の市内線とは異なり新デザインの車両が空港と香港島を高速鉄道で二十三分で結ばれるので、現在の啓徳空港に比べてアクセスは格段に改良される。 ランタオ島と九龍半島間の海峡は東京のレインボーブリッジに似た車と鉄道の二段架橋染が完成しており、既に日本と周様、観光名所になりつつある。 休憩所や売店なども完備して香港カップルのデートスポットとなっている。
現在の地下鉄もこの空港線にあわせて既に新機能が導入された。 まずはプリペイドカード、日本のJRなどが販売しているQカードの様なプリペイドではなくマイクロチップを組み込んだ『オクトプスカード』で、自動振り込み機で既に所有するカードに入金して利用する、クレジットカードからの振替も可能。 自動改札機の読み取り装置に近づけるだけで、利用料金を自動改札機が差し引き残高を記憶させるもので、日本ではまだ実用化していない。 この方式の採用にあたり香港交通局は従来の地下鉄だけではなく香港島、九龍半島すべてのバス、九龍半島北部の軽便鉄道もこの一枚のパスで利用可能にした。 また通常の地下鉄の自動販売機も釣銭が出る様に改善し、行き先駅の表示に触れるだけで料金が示される様になった。 香港の地下鉄はこの一年で約三十パーセントの運賃値上げがあり、市民はこれらの開発費を払わされている様だと嘆く。
唯一価格が据え置きなのが交通機関では香港島の二階式市電で一ドル六十セントで固定している。 設備は悪く遅い乗り物であるが、車体中の広告収入が値上げを阻止している。 高温多湿の香港ではこの電車の二階で風に吹かれてのひとときは、ゴージャスではないが誠に快適な気分を味わえる。 ただし電車が続いてくるので、後続の電車に乗る方が快適で寿司詰めから逃れられる。 ただしうっかり顔を窓から出したりすると二階建てのバスに鼻をこすられる危険有り。

長年香港に来ているが入国審査場でわずか二分で通過出来たのは今回が始めて。 改めてこの国への観光客が減少している現状に驚かされる。 なにしろ日本語が飛び交っていた場所なのにあまり気にならない程になってしまっている。 勿論荷物も早々に戻ってきてすんなりと今回は空港を後にした。 ところが町中にはいるとまるで爆撃を受けた様な工事現場だらけの風景が点在していて何事かと確かめると、古い建造物があちこちで解体されて、再開発花盛り。 中国側の投資家が香港の賃貸の高額を見込んでビルラッシュに拍車をかけた。 しかしこのところの経済不況で工事が中断していて工事途中で放置されているものも多く、これが爆撃後の様な風景を作り出している。 そして隣を見れば竹竿で組まれた足場をバックに四十階建てのビルが全面ガラス壁面でそそり立っているのが今日の香港である。 経済不況は深刻化していて、会社などの倒産が激増しており失業者があふれている。 ヤオハンの倒産では一度に数百人の店員が職を失ったが、金銭に目ざとい香港商法はこの失業者の増大を利用して自社の旧雇用者を解雇して低賃金で新たに社員を雇用するなど実に巧妙な賃金カットを実現している。 現集に若い女性などは勤務先を変えるごとに賞金が下がる昨今だと言う。


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