DTとWF
2010-05-05


フライラインにはWFと表示しているウェイトフォワードラインとDTと表示しているダブルテーパーラインがある。 この違いを説明している本は沢山あるが、ほとんどがラインの説明書の訳文程度でしかない。 DTラインは両側にテーパーがついているから裏返して使えるとかWFラインは遠投用だとかいわれているが、これではごく一部しか表現していないことになる。

石を投げると大きい石より小さい石のほうが遠くに飛ぶ。 これはスピードが早いからに他ならない。 投げ出す瞬間のスピードのことを初速と言う。 初速が同じなら石は大きくても小さくても同じ距離まで飛んで行く。 そして物が動くとエネルギーを持つ。 速度が同じなら大きい石のほうが、スピードが早ければ小さい石でもエネルギーは大きくなる。

車の免許の書き換え講習で、事故を起こした場合時速30キロより60キロで走っている車のほうが遥かに大きな事故になると説明を受けるが、これと同じことである。 ルアーフィッシングあるいは投げ釣りなどは錘が糸をひっぱって飛んで行く。 ところがフライラインが飛んで行く場合は少し様子が違う。 蛍の光が流れドラの音と共に出航する船のデッキから投げ出されるテープが飛ぶのと様子がよく似ている。 一端は固定されていて反対側がほどけて飛んで行く。 必要なだけの初速で投げれば初めは沢山巻いてあるテープが、だんだん少なくなり最後まで出し切ることができる。

フライラインの場合は一振り一振りがテープの場合と同じである。 短い距離では初速を押えて竿を振るし、少し初速を上げればラインを引き出しながら、ほどけるようにU字型のループを描いて延びて行く。 DTラインならこの動作を繰り返せばロッドの長さに見合った距離までキャストできる。 ところがWFラインの場合は少し様子が変わってくる。 先端から大体13ヤード位まではDTラインとほぼ同じであるが後はランニングラインと呼ばれる細いラインである。 したがってこれ以上ラインを出したければランニングラインの手前で初速を上げて残りのラインを引き出すようなキャストをしなければならない。 竿には長さ、材質等で決まる固有の振動周期があって、この周期に合わせて竿を振ることで小さな力で大きな反発力を出せる。 これを無視して思いっきり速く竿を振っても初速は上がるが、竿の周期にあっていないからかなりの腕力がいる。WFラインを楽にキャストするには竿の反発力を最大限に利用しながら初速を上げる方法が必要になる。

人が50キロで走っている電車の中を進行方向に10キロで走れば、結果的に人は60キロで走っていることになる。 これと同様に竿が振られている方向にラインのスピードを加えれば初速が上がる。 これがフォールである。 フォワードキャストとバックキャストにそれぞれフォールをかければダブルフォールになる。 だからWFラインでは13ヤード以上のキャストをする場合フォールは絶対必要になる。 そして正確なフォールが出来た時、結果的にループは狭くなる。 ループの出来始めとフォールのラインの引き終わりが正確に一致しないと初速を上げられない。 タイミングが合わず何度もフォールを繰り返して「ラインスピードを『加速』してキャストしなければ遠くに飛ばない」と言うのは勘違いもはなはだしい。 『加速』とはスタートしてから自分自身でスピードを上げる場合をいい、ちなみにロケットを打ち上げる場合の初速は「0」である。

DTラインとWFラインではロッドの設計が根本的に違う。 ところがロッドに表記してあるのは長さと番手だけで、DTかWFかの違いは明記されていない。


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[三浦剛資作品集]

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